平気そうに見えた。 皆の前では。 何となく、ただ何となくだが、それが気になっていた。 大きな樹の根元は、自らの葉で日が当たらない。 悟飯さんは独り、樹に凭れ、その先の空を見上げていた。 泣くのだろうと思ったが、いつまでもそのまま、見えない空を見上げていた。 俺は、近づく事もなく、声も掛けられずに、只それを光景として見ていた。 どれ程そうしていたのだろう。 悟飯さんも俺も。 日の長い季節とはいえ、既に星は昇っていた。 その時はとても長く感じていた。 しかし、今思えば一瞬のことのよう。 何故だったろう。 唐突に見つかってしまった。 それまで気付かれなかった事の方が不思議だったのだが。 「トランクスさん?」 それを待っていたのかも知れない。 俺は悟飯さんの傍に行き腰を下ろした。 今にも、泣き出しそうな表情を見せる幼い頬に掌を当てると、何も言わずに凭れてきた。 抱いたら泣いてしまうかと思い躊躇ったが、そうせずにはいられなくなり抱きしめた。 泣くのなら俺には見られたくはないだろうと考え、星空を見上げた。 しかし、そこからは星も空も見えなかった。 そのまま、お互いに何も云わず、悟飯さんが眠るまでずっとそこに居た。 寝顔はうんとあどけなかった。 抱き上げた悟飯さんの軽さが痛々しかった。 玄関のノッカーを叩いたが誰も出てこなかった。 チチさんはどうしたのだろうか、留守ならば眠る悟飯さんをどうしようか、などと考えていると扉が開いた。 中から出てきたチチさんは、悟飯さんが家に居なかった事に驚いていた。 彼女は彼女で一人の時間をこれからの自分達の為につくっていたのだろう。 俺は悟飯さんをベットに寝かせた。 そして、チチさんに頼んだ。 悟飯さんの傍にしばらく居させて欲しいと。 |