カコン。カコン。カラコン。 その足音は普段と異なる夏の音がした。 服部と遠山さんを迎えに東京駅に来ていた。 蘭に手を引かれて人混みを歩く。 白地に大きな百合の浴衣姿の蘭がいつもより大人びて見える。 昔のピンク色や水色の可愛らしい浴衣を着ていた蘭をまだはっきり覚えているのに。 繋いだ手はキレイで暖かくて、爪はピカピカしていた。 蘭が遠くに行ってしまう。 手のひらに蘭の体温を感じながらそんな事を思っていた。 改札の正面の柱の前に並んで服部達を待つ。 「花火楽しみだね」 蘭の柔らかい優しい笑顔。 ああ、ダメだ。蘭はもう大人になってオレは置いて行かれてしまう。 「うん」 わざと子供らしく笑ってみた。 蘭に触れたかったが、子供が甘えるみたいで出来ない。 蘭を見るのが今日はちょっと苦しい。 早く服部来ないかな。 現実から目を逸らすみたいに服部を待った。
a self-centered view.
August-21-2010 |